訪問セッション
桜が満開になった3月下旬、外出が難しい高齢の方のお宅へ、月に1回の訪問セッションが始まりました。
骨折を機に身体も気力も前を向かずに、初めは頑なに描かれようとしませんでした。お孫さんと私が描く様子を見ては、
「あぁ、色が変わったね。よい色になった。」
と話す80歳まで現役でお化粧品のスペシャリストだったAさん。時折、色が変わる度に、そんな言葉をかけてくれました。でも、ご自分では描かれようとはしません。好きな色が紫色であることを知り、色の事や昔の仕事のお話をお伺いしながら、本当に自分の仕事に誇りを持って生きてこられたのがわかりました。
オイルパステルの紫色を見せると、手が痛いと言いながらも手に持ってくださり、横に一本だけ線を引かれました。力強い素晴らしい線でした。でもそれきりで、デモを眺めているだけの時間が流れます。今日はもう描かれないかなぁと思った矢先、ご家族のお声かけもあり数分だけベッドから起き上がって際に描かれたのでした。
椅子に腰掛けてくださった、たった5分間のその時のご様子です。
内に秘めた底知れぬ力と、希望とが一瞬で放たれたようなそんなエネルギーを感じました。
初めに入れた一本の紫色の線が、最後まで光を放っていました。
こちらはお孫さんの作品。
鑑賞会後、「あなたは私をおばあちゃんと呼ばなかった。◯◯さんと名前で呼んでくれた。それが、嬉しかった。」と言葉をかけてくれました。
目の前の方への敬意を忘れずに、これからどんな風に寄り添えるだろうか・・時の重みを感じながら、アートの力を信じ、これからご一緒に過ごしていきたいと思います。
ご家族の皆様のご支援には、心より感謝申し上げます。
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