臨床美術をもう一度
昨年9月に「三四郎の学校」でワークショップをさせていただきましたが、「臨床美術をもう一度」というリクエストをいただき、みやこ町の先にある、日賀さんのご自宅で実施させていただきました。
日賀さんのお声かけで集まったみなさんは、11名。遠く江ノ島、東京、下関からもお越しくださいました。お宅のリビングは木のぬくもりがあり、大きな窓が開放的で自然光が差し込み、臨床美術にはぴったりの癒しの空間でした。
江ノ島から来てくださった方は、絵が大の苦手。また、東京からお越しの親子さんは、お母様が絵が得意、娘さんは苦手意識と正反対。だから互いに、どんな風に感じるかを、知りたかったとのこと。
肩慣らしに、オイルパステルで抽象表現を楽しんでいただくと、緊張と不安げだった表情のみなさんにも笑顔が見られました。「みんな違っていいんだ」という安心感や、やってみようかな?という自信につながります。
今日は、臨床美術を代表する「りんごの量感画」です。大切にしたいことは、上手く描こうとするのではなく「感じて描くこと」。今日のために、モチーフのりんごは、5店舗以上探しまわり、やっと満足いくモチーフに出会えました。モチーフに魅力を感じてもらえないと、参加者の方がモチーフを見た時に、心に感動が生まれないのです。感動がなければ、感じて描けないのです。
五感(見る、聞く、匂いをかぐ、味わう、触れる)を全て使って、まずはよくりんごをよーく知ることから始めました。触るとツルツルしたり、凸凹していたり、ほっぺにあてたらひんやりしたり、おしりの方がよく香りがしたり、たたくとパンと張ってて固かったり…中身の果肉がたっぷり詰まっている重さのあるりんごを、じっくり感じとっていただきました。そして、切って中身を見て、食べて味わう時間は、臨床美術ならではなのです。当然、味も感じ方は様々ですから、色にたとえてみると、違って当たり前ですね。中身の果肉の色から描いていき、次に皮の色もかぶせていきました。
割り箸でスクラッチすると、下地の果肉の色があらわれて明るくなります。はじめは「トマトみたい」と言っていた方も、ヘタや光なども入れたら「りんごになった!」と喜ばれました。輪郭など気にせずに描いていきますが、最後にここで切ることにより、初めて輪郭を見てりんごを生み出します!これが、そのお写真^-^。みなさん、とても満足げな表情ですね。
そして、この自分のりんごを引き立たせるために、色紙や端材で構成していきます。
遠くから作品を眺めてみるため、席を立って俯瞰してみたり、親子でコミュニケーションをとりながら進めている方も。この構成は、奥行きや動き、空間を考えるため、とっても脳を使います。でも、それが集中でき楽しい!
出来たら、リビングの大きな窓をギャラリーにして、鑑賞会をみんなでしました。あたたかな南からの自然光が作品を照らしてくれました。
鑑賞会は、みんなで感想や、作品の素敵なところをシェアする時間です。いい表情でしょ?
言葉にならない沈黙の時間も、安心感があり、穏やかなのが不思議なんです。
猫のくうちゃんも、参加してくれましたにゃー。。聞いてくれてる??
臨床美術は、未来(完成)を予測せず、今ここに集中させていくもの。今ここの連続が作品となるのです。感じることはみんな違うから、色や形の姿で表れた作品はどれも尊く感じられます。他者から評価されたり、競い合う美術ではなく、自分と対話して、モチーフと対話して、他者と共に居場所を共有することで言葉を超えた深いコミュニケーションが可能になります。自分の今を大切にしながらも、他者と共に生きることができる「共生」の美術といえます。
本当に遠くからありがとうございました!今回東京から教育ライターの方が体験に来てくださったので、後日記事に書いてくださるのがとっても楽しみです。ライターさんの感想は後日投稿させていただきます。 最後に、参加者のみなさんで記念撮影。ありがとうございました!
2020年2月22日 日賀邸ワークショップ。
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